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残留基準違反と回収

2009年6月5日
一会員

食品衛生法第11条の改正、いわゆるポジティブリスト制度が施行になってから3年がたちましたがその間に、ドリフトや水系流出による移遷、マイナークロップで適切な残留基準値が与えられていないことに起因する基準値違反、日本の基準値と輸出国または他の主要輸入国の基準値との違いなどに起因する違反が発生し、当該輸入者や食品メーカーは自主的または厚生労働省や保健所当局の指示に従い流通販売の停止、回収廃棄が発生しました。

この3年間に発生した残留農薬違反は食品の規格基準違反であっても安全性の問題つまり危害発生を心配しなければならないものはなかったといえます。毒物の意図的混入は残留農薬問題ではなくまたサンプリングによる残留農薬検査で防げる危害でもありません。なぜ過去3年の残留農薬違反で食品衛生上の安全問題はなかったという理由は次の通りです。現行制度における基準値の決め方では、剤の安全性の指標であるADIが包括的判断の基礎ではあっても、実際の作物ごとへの割り当ては農薬の製造登録にかかわる作物残留試験結果が主役です。ある一つの剤についてそのADIの範囲を超える割り当てはされないので、どの作物にどの程度の基準値が与えられてもそれ自体で安全性を心配することは無いのですが、問題は作物残留試験データが無いために基準値を与えられなかった作物・食品に一律基準が適用になることです。結果として、似たような作物・食品の間で残留基準が1000倍を超えるものが珍しくありません。行政による検査では適用される基準を超えると違反、即回収となっています。基準値違反、即、安全性に問題ありではないのですが運用では安全性に問題が無いものに対しても一律回収・廃棄という厳しい取り締まりの構図ができてしまっていることに問題があります。残留基準値を超える検出があった場合でも安全性に問題があるかもしれないと疑うべきときは少なくとも単独でADIを超えているときで、回収が必要なのは、ARfD(急性参照用量)を超えたときでしょう。単に基準値を超えただけの一時的な限られたロットへ残留で安全性の問題はありえません。改善を指導することで十分足るのではないでしょうか。

またこのような必要以上に厳しい運用がメデイアで報道されることによって残留農薬違反となったものは危険なものだという誤った印象を刷り込んでいる一面があると思います。ポジティブリスト制度が施行されてから3年を経て制度の運用の仕方が誤解を深めているということは見逃せません。基準を超えた残留の検出があれば回収廃棄の指導が行われますが、多くの飢餓に苦しむ人々が世界中にいて、国内でも不安定な雇用かとセーフティーネットの不備から食べることさえままならない人がいる現実で、安全性に問題の無い貴重な食品を捨てさせるのはまさにもったいないことです。

大規模な残留農薬検査実施と、ごくわずかな率のしかも安全性に問題の無い違反の発見、それに対する回収廃棄指導はこれもまた行政のパフォーマンスの類でしょうか。違反は違反だから回収するのは当然との意見もあるものの、それが引き起こすメリットと、デメリットついて深い考慮がほしいところです。残留農薬の食品衛生上のリスクに対する誤解というより迷信を解くにはまずは当局の理に適った科学的な対応が欠かせません。それがメディアを通して伝わり、信じ込んだ迷信を再考する機会になるのではないかと考えます。このまま21世紀の日本にはびこったこの迷信を放置するのでしょうか。食品安全対策の費用対効果は、破綻してしまった財政のもとでは厳しく検証しなくてはならない事項です。

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