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『メラミン問題と食の安全』再考

2009年3月11日
台湾大学歴史学研究所博士課程
戸倉恒信

「メラミン汚染事件」が起きてから設定された、該物質に対するわが国の基準値(一般食品:2.5ppm)については、既に食品安全委員会等HPで公表されているが、基準値の成り立ちを考えるという意味では、そこには顕在化されない、まさに共有されるべき問題が存在しているように思えてならない。

まず、食品添加物ではないメラミンを敢えて「食品添加物」というカテゴリーに入れなくては取締りができないような制度がこの国に既成しているのだとすれば、元来、食品添加物ではないメラミンが、この「制度」の存在によって「食品添加物としてのメラミン」に変質させられていることになる。

事件に対する前提的な認識として、乳幼児用調整乳へのメラミン汚染によって、中国では乳幼児の死亡と健康被害が報告されているが、一般食品の消費者(つまり乳幼児以外)の死亡や健康被害は報告されてはいない。したがってポイントは、(未熟児を含む)乳幼児が「耐えうる」一日摂取量(Tolerable Dairy Intake:以下TDI)が、如何なる条件を基に算出されているかである。

問題は、乳幼児(未熟児を含む)のメラミンに対する「何の影響もない数値」に言及してゆく際、「食品添加物」に使用される「可」摂取量/日(Acceptable Dairy Intake:以下ADI)という概念を援用することが、如何なる前提的思考を基に為されているか、そしてこれが如何なる結果を齎すかということである。

私が危惧しているのは、そもそも食品添加物ではないメラミンの過剰摂取によって起きている事件を、「ADI」という概念から再認識することで、あたかも「食品添加物」の過剰摂取によって起きた事故が「メラミン汚染事件」であるというような命題を生産しないのか、ということである。例えば、「赤ちゃんにだけ1ppmという基準を設けている国」に言及する場合、該国の基準値の成り立ちが抱えている問題を指摘できなくなるのを危惧するのである。

「2.5ppm」を「TDI」から言及するのと、「ADI」から捉えるのとでは結果的に何がどう異なるのか、精査をしておく必要がある。そして更に、定量限界値(0.5ppm)の設置が、制度的に「食品添加物」というカテゴリーの運用を必然的に迫っているのかどうかである。「2.5ppm」という基準値の設定は、一般食品に対する飽く迄も「国際的な公認」に追随した設定であり、定量限界値とは根本的にその存在の意味を異にしている。したがって定量限界値(0.5ppm)を「2.5ppm」に合わせるという提言は、単に制度と検査法・機器との関係を一致させるだけで、市民に「分かりやすく」する以上の意味はなく、如上のような「制度」の抱える問題を根本的に考え直そうとするものではない。

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