今日は新聞、テレビ関係者と食品の安全についての意見交換会がありました。
話題になったのは残留農薬です。新聞も、とくにテレビも、読む人に分かりやすい言葉で、短く説明をすることが大事です。残留農薬の違反を報道するときにはxxppmという数字で伝えるより、基準のxx倍の違反というほうが分かりやすいので、そういう書き方になるという話がありました。
たしかに「基準の200倍も違反!」といった見出しがあると、「これは大変な違反だ!危ない!」という感じになります。
ところが実際はこれは健康に何の影響がない違反なのです。
どういうことでしょうか?それを知るためには「ポジティブリスト」の説明から始めなくてはなりません。
2006年5月から、すべての農薬や食品添加物に基準を作り、基準を超える農薬などが含まれる食品は禁止になりました。
それまでに基準がある農薬などはいいのですが、基準がないものは国際基準などを参考にして「暫定基準」を作り、それもないものは「絶対に安全」というきびしい一律基準、0.01ppmを採用しました。
こうして基準がないために取締りが出来なかった輸入食品の残留農薬なども取り締まることが出来るようになりました。これはよかった点です。
ところが悪いことも起こりました。残留農薬の基準は野菜ごとに決めます。図の農薬Bのように、米とブロッコリーとキャベツは2から5ppmという基準が決めてあったのでそれを使うのですが、小麦、コマツナ、エダマメには基準がなかったので0.01ppmの一律基準を当てはめました。
常識的に考えれば小麦、コマツナ、エダマメも2ppmにしてもよさそうなのですが、データがないのでそうも行きません。
ところが、こんなに厳しくすると、近くの畑でまいた農薬が風で飛んできても0.01ppmを超えて、違反になってしまいます。キャベツに2ppm近く付着していても基準違反にならない農薬が、コマツナだとその1/200の0.01ppmを超えると違反になってしまい、「基準の200倍の違反!」と書かれてしまいます。
しかし、2ppmほどの農薬が付着したキャベツを一生の間毎日食べても健康に影響がないのですから、同じ量の農薬が付着した小松菜を食べても健康に影響がないことはお分かりになると思います。
新聞、テレビ関係者にお願いをしたのは、消費者全員にこんな面倒な仕組みを理解してもらうことは難しいので、せめて報道関係者がこういう「規制に違反しても、健康に被害はない」という例がたくさんあることを念頭において危険性を判断し、記事を書いてほしいということです。
農薬の違反のほとんどすべてが一律規準の違反です。早くデータを集めて正式にリスク評価を行えば、コマツナの基準0.01ppmは例えば2ppmに変更になるでしょう。そうすれば、残留農薬の基準違反はほとんどなくなります。
食品安全委員会は一生懸命リスク評価の作業をしていますが、それが終わるまでにあと3年はかかるでしょう。
その日までは「また基準のxx倍も違反!」という記事が続き、「農薬は怖い!」と思う人を増やしていくのでしょうか。
群馬県食品安全情報センターは、残留農薬等の違反が発見されたときに、その違反が健康に対してどの程度の影響があるのかを3段階に分けて発表しています。「違反はすべて危険」という誤解を解くための取り組みですので、ぜひ見てくださいね。
http://www.pref.gunma.jp/cts/PortalServlet?
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