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コラムTOP > 事故米事件 事故米事件2008年9月、農薬やカビ毒アフラトキシンの残留があったために非食用の「事故米」として政府から民間企業に売り渡された外国産米が、食用として転売されたことが発覚した。調査の結果、精米されたもち米にメタミドホスが最高0.06ppm(基準値0.01ppm)、精米されたうるち米にアセタミプリドが0.03ppm(基準値0.01ppm)という微量が検出された。これらの濃度は基準違反ではあるが、健康に被害がない量である。また事故米を使用した商品からアフラトキシンは検出されなかった。しかし、この米を使って製造した焼酎、和菓子、給食などを食べた人から不安の声が起こった。 「違反にもかかわらず安全」といえるのは、基準を超えたときに直ちに健康被害が出ないような設定がされているためである。すなわち健康に何の被害もない「無毒性量」の1/100以下の量を、一生涯にわたって摂取し続けても健康への悪影響がないと推定される「一日摂取許容量」として、これを基に基準が設定されているのである。 農薬の基準違反については、もう一つの要因がある。それが2006年5月に発足したポジティブリスト制度である。この制度に基づいてすべての農薬と食品に基準を設定した。すでに基準があるものはこれを採用し、ないものは海外の基準を参考にして暫定基準を定め、それもない場合には一律基準として0.01ppmという極めて厳しい値を採用した。アセタミプリドは、大麦、そばなどでは0.2ppmという基準であり、米がその20倍も厳しい0.01ppmなのは、この一律基準のためである。メタミドホスの基準が米の場合0.01ppmであるのも同様の理由による。従って、基準を6倍越えたことは違反ではあるが、健康に被害が起こることはないのである。事故米を輸入したのは2006年5月以前であり、そのときにはこの米は違反ではなかったが、厳しい一律基準の設定により事故米になったのである。 このことは違反発覚時から知られた事実であったが、これについての報道はほとんどなく、新聞には「基準の6倍」、「食の危機」、「幼稚園給食にも」といった見出しが躍り、これが不安を大きくした。不安に拍車をかけたのが、知らずに事故米を購入した企業の名前の公表である。その結果、ある調査によれば40%以上の消費者が「自分も食べたかもしれない」と感じ、不安が拡大した。製品に危険性があれば、関係企業名と製品名を公表して健康被害を防ぐ対策が必要である。しかし、危険がないことが分かっていながら政府が被害者企業名を公表したことは不安と風評被害の拡大以外に何の意味もなく、政府の被害企業への謝罪も政府の信用回復につながってはいない。 事故米事件を起こした違反企業と、これを見逃した農林水産省の責任は重い。しかし、その責任追及だけでなく、「食べたかもしれない」という消費者の不安解消の努力が必要であった。ところが、政府の方針の迷走とメディアの不勉強により、後者の対策は忘れ去られたことがこの事件の反省点といえよう。
(H20.10.15 会長 唐木英明)
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